「ヴァン国王陛下、メディナ王妃陛下のご来場です!」
万雷の拍手に出迎えられて、パーティー会場に一組の男女が入ってきた。
黒髪の精悍な男性……国王であるヴァン・アーレングス。
金髪の美しい女性……第一妃であるメディナ・アーレングス。
国の頂点に君臨する男女が腕を組んで現れる。
その日、王宮で戦勝記念パーティーが開かれていた。隣国との戦争に勝利した祝勝会である。国中の有力者が集まっており、順番に国王夫婦に挨拶をしてきた。
「おめでとうございます、陛下!」
「流石ですな。よろしければ戦の話を聞かせてください」
貴族達が口々にヴァンを褒め称える。
ヴァンは革命を成功させて新たな国を創建した覇王。戦場に出れば一度として敗北したことのない軍神であった。
国王の歓心を得ようと多くの人間が集まってきた。
「ねえ、あの人が『売国王女』?」
「そうだな。どの面を下げてここにいるのやら」
そんな中、一部の貴族がヒソヒソと陰口を叩いていた。
矛先を向けられているのはヴァンではなく、隣の王妃である。
メディナはヴァンに滅ぼされたアイドラン王国の王女であり、民のためにヴァンに取り入って妃になった。
一部の者は親の仇と結婚したメディナのことを恥知らずだと侮蔑しており、ことあるごとに悪意をぶつけていた。
「いったい、どんな方法で陛下の寵愛を得たのかしら?」
「決まっているだろう。あの身体だよ」
「娼婦と同じじゃないか、ハハッ!」
陰口は小声であり、メディナの耳に届くことはなかった。
「すまない、少し離れてもらえるか?」
だが……耳聡くそれを聞きつけた者がいた。
ヴァンがメディナから離れ、周囲の貴族にも距離を取らせる。
「どうやって敵を倒したのか聞きたいんだったな……それは、こうだ!」
ヴァンが腰の剣を抜いて、勢い良く振り下ろす。
ズバンッと布を断つような音が空気を切り裂いた。
「ヒッ……!」
陰口を言っていた貴族が恐怖の表情で座り込む。
ヴァンは素振りをしただけ。何も斬っていない。
だが……放たれた濃密な殺気がピンポイントで性悪な貴族に叩きつけられる。
「こう! こう! こうだっ!」
「ッッッ……!?」
数人の貴族が泡を噴いて失神する。周りの人間には何が起こったかわからないだろうが、殺気で打たれた彼らは脳内でヴァンに殺される自分達を幻視していた。
「フウ……」
気絶した者達が使用人に運び出される。
愛する王妃を中傷する者達を成敗して、ヴァンが満足そうに一息つく。
「急にどうしたのですか?」
「何でもない……それより、一曲踊ろうか」
不思議そうな顔をするメディナにヴァンが手を差し出した。
「ええ、喜んで」
メディナが大輪の薔薇のような笑みを浮かべ、ヴァンの手を取った。
かつて敵同士であった夫婦は寄り添い合い、多くの者に見守られながら仲睦まじそうにダンスをしたのであった。
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