奏のダンジョン学園訪問
「凛 先生、八周年記念講演ですか?」
「そうなの~、ダンジョン学園の新校舎設立八周年の記念行事があってね~、卒業生で新進気鋭のA級探索者チーム『奏でる旋律』の奏 くんに講演してほしいんだって~」
「へー。僕は構いませんが……なんで五でも十でもなくて八周年?」
「……さあ? 思い立ったら吉日、ってやつかしら~?」
というわけで、僕は母校のダンジョン学園で講演することになったのだ。
「めちゃくちゃ緊張したー。大勢の前で喋るってダンジョンより難しいかもー」
なんとか無事に講演を終えた僕は、懐かしの学園校舎の中を歩いていく。しばらくすると、僕は妙な雰囲気の美少女を見つける。
「あの子表情が暗いけど……どうしたんだろ?」
学園の先輩としては放っておけないので彼女に声をかける。決してボーイッシュで巨乳な彼女が僕の好みだったから、という理由ではない。
「ね、なんか元気ないけど、大丈夫?」
「大丈夫だよっ。誰か知らないけど、ありがとっ」
目を瞬かせつつ彼女はそう言うけど、どう見ても大丈夫そうではない。明らかに何かに悩んでいる様子。
「何か困ってる? ダンジョンの話なら相談に乗れるよ」
「んー……でも、色んな人に相談して、誰も解決できなかったんだ。見ず知らずの君に相談しても……って、あれ? 君、どこかで見たような?」
首を傾げた彼女は、ぐっ、と顔を近づけてくる。甘い吐息が鼻先をくすぐる距離まで近づくと、彼女の目がまんまるに広げられる。
「ひぁぁっ! 奏先輩っ!? し、失礼しました!」
「先輩って……気楽に話してくれていいよ」
「そんな、恐れ多いです! 奏先輩は、伝説の探索者なんですからっ!」
彼女が言うには僕はこの学園で神格化されているそう。確かに講演の時も目を輝かせながら耳を傾ける学園生が多かった気はした。
「それでどうしたの?」
「実はですね──」
話をまとめると、彼女は優秀な職業持ちで将来を有望視されていたけど、最近視力が極端に落ちて『フェイズワン』ダンジョン攻略に支障が出ている。視力の回復は見込めず、今では学園退学も視野に入っているそう。そんな悩める後輩を放っておけるわけはなく。
「ダンジョン探索一回だけの対策はあるんだけど……試してみる?」
「一回だけ? でも、学園退学する前に、試してみたいです」
前向きになった彼女に僕が何をするのかと言えば。
──ちゅっ、ちゅぅっ、ちゅっ、ちゅぅぅっ♡
「ひっ♡ ひぁあっ♡ ひふぅぅっ♡ ひぁぁぁぁぁあっ♡♡」
『認識強化』の唇のツボへのキス《点穴》を受け、気持ちよさそうにびくびくと痙 攣 する美少女。やがて彼女は認識能力の変化に気づいたのか目を見開く。
「奏先輩のキス、す、すごかったぁ♡ って、え? 見えてるっ! 見えなくてもわかるっ! これなら……奏先輩、失礼します!」
そのまま『フェイズワン』ダンジョンに駆け込んだ彼女は、その日のうちに『フェイズワン』ダンジョンを完全攻略したのだ。
その頃『奏でる旋律』のギルドホーム。
「む……奏くんがまた、女の子を増やした気がします」
「だねーっ、奏っち、やらかした気がするーっ」
「広沢くんは僕たちというものがありながら」
「奏さま、戻ったらお仕置きだしーっ」
学園四天王の愛 菜 ・南 ちゃん、遥 香 さん、真 里 亞 さんが節操ない僕へのお仕置きプランを考えていたのだけど、その時の僕は知る由もなかったのだ。
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