電車で殴られてるイケメン男子高校生を助けたら女子高の王子様だった件2

電車の中のいつもの修羅場(前編)

電車の中というのは人間交差点だ。
普段は接点がまるで無いような者同士が、たまたま同じ方面の場所に用事があるから同じ電車の車両という狭い空間に居合わせる。
そして、そんな電車内では思わぬ縁を結ぶことがある。
「フフフッ。今日も才斗と一緒~♪」
今、俺の腕にぶら下がっている叡桜女子高校の王子様という有名人である星名玲との出会いも、まさに電車の中で暴漢に殴られている所を助けた事から、奇妙な縁が始まった。
当初は男だと思って仲良くしていたら、相手はまさかの女の子だったという超展開。
玲は、あれ以来すっかり俺に懐いてしまい、朝の登校の電車で一緒になると、こうして電車内の衆人環視の下で俺の腕をホールドするに至っているのだ。
「ちゃんと、吊り革を掴んでないと危ないぞ玲」
「才斗がちゃんと支えてくれてるから平気」
俺の事を信じ切って身体を預けてくる玲に対し、俺の方はというと、走行する電車の揺れで玲の身体が危なくないよう支えるために、必死で体幹の筋肉で支える日々だ。
まぁ、それは筋トレの一環になるから良いとしてだ。
問題なのは……。
「玲様……。身体をあんな風に、あの男に預けて……」
「もう玲様のパンツタイプで闇王子様スタイルの制服姿を拝むことはできないのでしょうか……」
「あ……あ……あ……あ……」
「世界が壊れてしまった……」
呻くような声がする方に視線を向けると、同じ電車内に乗り合わせている叡桜女子高校の女の子達がこちらを見ながら、ヨヨヨと涙ぐんでいる。
彼女たちは、女子校内一のイケメン王子様である玲の親衛隊なのだが、最近は恋する乙女として暴走する玲の姿を目の当たりにしては、脳を破壊され続けている日々を送っている。
自分のせいで、深窓の令嬢が通うお嬢様女子高である叡桜女子高の女子生徒たちが脳を破壊されているのは色々と忍びないんだよな……。
「おはよ。才斗にヘタレ王子」
「凛奈ちゃん……。その呼び方はやめてって、いつも言ってるでしょ」
「お、おう……。凛奈おはよ」
もう一人の俺の頭痛の種である、高校のクラスメイトで隣の席のお嬢様である西野凛奈も電車に乗り込んできた。
「ファーストコンタクトで私に泣かされたヘタレ王子様が何言ってるんだか」
「その事はいい加減忘れてよ!」
「まぁまぁまぁ」
そして、顔を合わせたら早速始まる小競り合いを毎度俺が宥めなくてはいけない。
この光景も、最早すっかり御馴染みな物である。
なお、ファーストコンタクトで玲が泣かされたというのは、まだ玲が男だと勘違いしていた時に2人を引き合わせたら、いち早く玲が女の子だと見抜いた凛奈が、玲に正論パンチを浴びせまくったからである。
以来2人はこんな風に、会えば瞬く間にケンカする犬猿の仲なのである。

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